「中華そば海龍」


「平凡の中の非凡」ここの中華そばを一言で言い表わすならば、これであろうか。
見た目は一瞬、変哲のないオーソドックス。だが数秒後、実は視覚的に大変美しい中華そばであることに気付く。

そして味にしても然りである。スープはやや薄めの醤油色で「澄み切っている」という表現がぴったりである。それもそのはず、客の注文が途切れる合間にアクを丁寧に取り除いているのだ。ダシは特定の材料が突出していることはなく、やはりオーソドックス。しかし、バランスは異常なまでに良好である。
ちなみに、ここのスープの決め手となっているのはおそらく油であろう。寸胴の中の丸鶏から出た油である。寸胴の表面の油をすくい取り、丼に注いでいるのだが、サジ加減は微妙。経験と勘の為せる技である。所謂一般的な中華そばと比較すると、丼の表面の鶏油は多いのだが、奥行きを与えてはいても、しつこさには直結しない。まさに後を引く味である。

麺も一見、オーソドックス。しかし、スープとの馴染みを考えたら、ベストの選択なのだろう。そしてこの店の茹で方の丁寧さ、これは特筆に値する。とにかく良くほぐした上で大きな北京鍋に入れながら茹でるので、麺が絡まることは一切ない。短時間で茹で上げ、上げ網ですくった後の湯切りの丁寧さも眼を見張る。丼に移してからも箸で麺を持ち上げ手前に寄せ、そして後方へ。こうしてほぐして揃えた麺はまるで上質な織物のよう、と言っては言い過ぎであろうか。このような丁寧な作業ゆえに、麺1本1本がスープに素晴しく馴染んでいるのである。

具も基本的なオーソドックスなスタイル。しかし、とにかく美しい盛り付けに、ただただ溜め息のみ、である。
一瞬感じる華やかさというものはないが、まさに「平凡の中の非凡」。作り手の真摯な姿勢がひしひしと伝わってくる、満足度の高い一杯である。

「中華そば海龍」
  住所 : 神奈川県藤沢市亀井野3275-1
  電話 : 0466-81-3948
  営業時間 : 朝11:30〜深夜0:00  日祝は朝11:30〜夜10:00
  定休日 : 水曜日
  交通 : 小田急線善行駅から徒歩15分、国道467号線沿い


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