ムシ歯は本当に感染るの??
前項で母子感染について記しましたが、「どうもピンと来ない」とか「ちょっと信じられない、本当に感染るの?」といった意見を耳にします。
そこで、もう少しわかりやすく書きたいと思います。
、、、以前は、虫歯になりやすいとか、なりにくいとかは、ほとんど親からの歯の質の遺伝だと言われていました。要するに、遺伝と言われるぐらいに親の状態に似た傾向があったのです。
しかし、虫歯の発生因子は歯の質だけではありません。
唾液、細菌、食べ物、歯ブラシの状態などなど、、、
その中で細菌に注目したところ、ある傾向について注目されるようになってきました。
虫歯になりやすい人は、虫歯になりやすい菌の割合が多いのです。
虫歯になりにくい人は、その菌の割合が少ないのです。
そして、やはり感染経路として疑わしいのは親とか近親者から、、、ということになります。
そしてその菌の割合は、3歳頃までにある程度が決まる、、、。
そのように言われ、広く知られるようになりました。
ただ、そう言われ出したのは21世紀になる直前くらいのように思います。
本当ににそうなのか?、、、違うのか?、、、いろいろな意見があります。
僕もそれなりの数の患者さんを診てきましたが、その中に歯磨きや食生活だけが原因というのでは説明がつかない事例を数多く診てきました。
親→子への感染は可能性として十分にあると思います。(虫歯に関しても歯周病に関しても)御両親や祖父母などの歯が悪い場合には、できるだけ細菌の感染をさせないように努力する事自体は、決して無駄な努力だとは思いません。
以下は私が前の職場で担当していた親子の患者さんの事例です。
お嬢さんは29歳、お母様は57歳です。ともに虫歯はほとんどありません。
お嬢さんはかなり重症な歯周病ですでに3本の歯を抜歯しています。それ以外にも動揺している歯が数本あり、20歳前から悩んでいるそうです。
私は『ブラキシズムや口呼吸による歯周病の悪化、、、もしくは若年性歯周炎という特殊な歯周病、、、それに加えてブラッシングなどのプラークコントロールが不十分』であること を疑いました。
しかし口呼吸はないようですし、ブラキシズムも取り立てて顕著というわけではないようです。ブラッシングはものすごくしっかり行うお嬢さんで来院時にはいつもほとんど歯垢はありません。
一方で、お母様はまだ1本も抜歯に至っていません。お嬢さんのコンディションよりもかなり良い状態です。
しかしお嬢さんに比較してむしろいつもプラークや歯石をつけてくるので毎回ブラッシング指導に苦労し、歯石除去は毎回必須です。
、、、なんで?逆じゃないの???
お嬢さんとお話ししている時に細菌感染の話しをしたところ、、、
『先生、わかりました!。自分の中での謎が解けました!。親とは10歳になるまでまで離れて生活してました。おばあちゃんは若い頃から歯が抜けて、ずっと悩んでいる人でした。私はおばあちゃんから菌をもらったんだと思います!』
、、、そう言われました。
これはとても極端な例ですし、必ずしもそれが原因かどうか分かりません。
ただ、個人的には、おそらくそうだろう、、、と思っています。
親子のスキンシップはとても大切です。 極端な、あたかも隔離するかのような食器の管理までは必要ないと思います。
でも、1度かみ砕いたものを口移しであげたりするのは、さすがにやめた方が良いと思います。
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