「狂牛病と歯周病」


最近、アメリカに在住のSさんから、こんなメールをいただきました。

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はじめまして、お便りします。
現在アメリカで生活しております。来週、歯科治療を受ける予定を入れました。
その際に、1つ疑問があり、それを検索していて、このHPにたどり着きました。
以下の疑問点につき、教えて頂けると大変助かります。

日本では、狂牛病の騒ぎがありましたが、歯科治療においても牛由来のものが使われているという記事をネット上で読みました。そこには、”補てん剤”とありましたが、どういう治療に使われるものなのでしょうか?また、その他、歯科の治療で、牛由来のものはあるのでしょうか?だとすると、それは、どのような治療に使われるものなのでしょうか?
私の今の歯の状態ですが、レントゲンの結果、奥歯(金のかぶせてある治療済みのもの)に深い虫歯があると言われました。削ってみて、それが本当にかなり深いようだったら、更に、近くの骨を削る簡単なオペを行うとの事です。このような治療において、使われる薬、または、詰め物(?)などは、問題はないのでしょうか?
日本とアメリカでは、歯科治療で使われる薬やその他のものにおいて、使われる原料はだいぶ異なっているものもあるとは思われますが、私が知りたいことは、まず、一般に日本では、現在、歯科治療で、どのような治療で使う、どのようなもの(薬を含めて)が危ないとされているのかということです。とても不安に思っています。
どうか教えて下さい。宜しくお願い申し上げます。

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Sさん、こんにちは。
HP見ていただいてありがとうございます。

まず現在、日本および世界で使われている薬や生体材料等で「危ないもの」は、原則として存在しないと思います。

また、日本とアメリカで日常に使われている薬や製剤、そしてその原料に大差はないと思います。厚生労働省が認可していなくても、医師が自身の責任の範囲内で、個人輸入の上で使用することは認められているからです。日本の健康保険では、適用する薬や材料等を制限しているため、使用頻度に関してはアメリカと異なったものとなっているとは思いますが、先進国の中で日本だけでしか使われていない、、、とか、アメリカだけでのみ使用されている、、、というものはないと思います。あくまで使用頻度の違いと思います。

Sさんのケースは、文面からだけでは断言することはできませんが、想像するにムシ歯が歯の根の方まで拡がってしまっていて、支えている歯槽骨に接しているようなところまで拡がっているのかと思われます。このような場合は、骨を削る(といってもわずかですが)必要があるかもしれません。

もともと骨に欠損がある場合等は「骨補填剤」等を使いますが、それにはウシ骨由来のコラーゲン製剤等があります。骨補填剤以外にもウシ由来の製剤は多数ありますが、挙げはじめると、枚挙に暇がなくなるので、ここでは割愛させていただきます。

医学の世界はインターネットが普及する前からグローバル化が相当に進んでおり、先進国であれば相当に厳しい基準が設けられており、製品化されたものはどのような検査の結果に基づいて、安全性が確立されているのかの情報を完全に公開しなくてはならなくなっています。世界中のどのメーカーも、危険な製剤を作ろうと思っているところはないわけで、狂牛病の問題にしても、開発段階では狂牛病なるものがこの世に出現し、人体にも影響を及ぼす可能性がでてくることなど、開発者の誰ひとりとして、夢にも思わなかったことでしょう。

日本における薬害エイズにおける血液製剤や、狂牛病の問題等は、問題が発覚した時点から後の、行政の対応の遅れが原因なわけで、医療現場に情報が降りてこない以上、現場では対応ができないのが現実です。つまり、使用した時点では安全であると信じて疑わなかったものが、後々になって安全でなかったと知らされるわけです。社会問題にまでなった血液製剤やウシ由来製剤に関しては、現時点で日本で出回っているものに関しては、逆に安全だと言えるでしょう。
では現在、安全だとして使われている薬や材料の中にも、後になって実は安全でなかった、となる可能性はないのかと言われれば、可能性はゼロではありません。
しかしそれで疑心暗鬼になってしまっては、きりがなくなってしまうとも思います。

どうしても心配であるならば、生体材料は使わないで、、、と主治医に依頼することになります。生体材料が使えないとなれば、人工材料か?ということになるでしょうか、、、。人工材料ならば狂牛病等に関しての心配はなくなりますが、かわりに生体親和性は低くなりますので、術後の炎症が強くなる等のトラブルの危険性は増える可能性があります。その他には、自家移植等の方法もありますが、供給部位をどこにするか等の問題があります。
結局はどれも一長一短なわけです。

冒頭で「危険なものはない」と書きましたが、逆に言えば、薬などは「完全に安全なものなどない」わけで、何らかの副作用は確実に存在します。X線撮影にしても、被爆することにより悪性腫瘍になるリスクが高くなりますが、それを気にし始めると、日光浴やアウトドアスポーツは一切できなくなります。

どんな治療も結局は「リスク対治療効果」で判断します。その場のリスクを恐れてその治療を避けることにより、長期的にはかえってリスクが高まるならば、その治療は適用されるべきでしょう。要は、リスクに関する情報、治療方法に関する情報をしっかり提示してもらい、主治医と相談し、納得の上で治療を受けることが肝要と考えます。

結論は「ごく当たり前な内容」になってしまいましたが、結局はこれに尽きると思います。その結果、医師との信頼関係が深まれば、不安も消えていくと思うのです。



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