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以前、サラリーマンの方から以下のような質問のメールをいただきました。
いわゆる「よくある御質問」なのですが、
普段からお店のカウンターでお酒を呑んでいる時など、隣のお客さんに僕の職業が歯科医師だということがバレると、御自分のお口の中の大まかな状態と、過去の歯医者での辛かった体験談について、ひと通りお話された後、大抵これと同様の質問をなさいます。
メールでの冷静な御質問とは異なり、その方がお酒に酔っている時などは、かなりの勢いで怒られてしまいます（笑）。
歯医者は嫌われる職業の代表格とはいえ、それほど多くの方が不満に感じている事柄なのでしょう。
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はじめまして。
３７才のサラリーマン、ヒロシです。
かねがねお伺いしたいと思っていたのですが、
歯科治療は、どうしてあんなに時間がかかるのでしょうね。
現在も気になる虫歯があるのですが
拘束時間の長さと通院の回数の多さを考えると
完治まで通い続ける自信がなく、躊躇しています。
こうしている間にも虫歯が進行してしまい、
ますます治療に時間がかかることになるだろうなぁとは
わかっているつもりなのですが、悪循環ですね。
保険の決まりか何かで一日に一定以上の治療が出来ないとか
そんな話を聞いたこともあるような気がしますが、
せめて通院回数だけでも減らすことは出来ないものでしょうか？
一日に多くの患者さんを診なければならないなかで
一人の患者にかかる時間には制限もあるとは思いますが、
時間に追われる多くの現代人の共通の願い（おおげさです）では
ないかとも考えます。
自業自得とはいえ、何ヶ月も通い続けるのは大変です。
歯科治療のために会社を休むという話もあまり聞きませんが
みなさんどうしていらっしゃるのでしょうか？
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ヒロシさん、こんにちは。
御質問ありがとうございます。
３７歳の方ですと職場では責任あるポストについている方が多いと思いますが、一方で、ご自分１人の裁量で自分の時間をきりもりできるかというと、そうもいかない、、、
という方がほとんどではないかと思います。
自分がこの歳になるとお気持ちは本当に良くわかります。
そのような責任ある立場の人が歯科医院に行く時間をつくり出すのは多大な困難が伴うものです。
さて、おっしゃるように、歯科治療に回数と期間がかかることは事実です。
歯科疾患は一部を除いて慢性疾患のため、病院へ行って薬をもらってそれを飲めばあとは自分の治癒能力で徐々に治っていくというものではありません。
また、ヒロシさんのおっしゃる通り、保険のルールには、ある処置の後に続く次の処置は日を異にしなくてはならない、というものは確かに存在します。
また一度にいろいろな処置をする、いわゆる「濃い治療」は保険では認められない傾向にあります。
それ以外に、医学的にどうしても回数、期間が必要な治療というものも、もちろんあります。
例を挙げだすときりがないので、今回はひとつだけ挙げますが、単に金属をかぶせる場合でも、その歯の土台である歯周組織（歯ぐき）に異常がある場合はそちらを先に治療します。
その結果、歯肉は引き締まり、歯を削って型をとる時にも良い型がとれます。
良い型がとれれば当然、技工士さんが作る製作物の精密性も良いものになってきます。
かぶせたものが精密で、しかも土台（歯ぐき）もしっかりしていれば、装着後も長もちします。
高いお金を払った割にすぐダメになった、ということもなくなってくるはずです。
ただしそのためには回数と期間がかかってしまい、僕もそれを患者さんに強いなくてはならない場合などは、本当に心苦しく思います。
僕は現在、患者さんに治療方針と計画を説明し、納得していただいた上で、期間と回数は相応にかけさせていただいております。
もちろん、週に一度は必ずいらして下さい、ということもありませんし、治療全期間中の審美性、食事のしやすさに関しては、損なうことのないように最大限の注意は払っております。
しかし、本当に忙しい方はそれでも通えないとおっしゃいます。
これは本当に難しい問題なので完璧な解答はできません。
しかしながら、偉そうで恐縮ですが、ひとつだけアドバイスできることがあります。
それは、一旦開始した治療を中断し放置するのが一番よくないということです。
それを防ぐためには、自分はこの条件でしか通えないということを担当の歯科医師にはっきりと告げることだと思います。
そしてあたりまえのことではありますが、なるべく通いやすい場所に立地していて、仕事に支障が少ない診療時間を設定している歯科医院を選ぶことも重要だと思います。
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以上が僕の回答なのですが、もちろん僕の正直な気持ちですし嘘はありません。ただし、これは模範回答というか、当たり障りのない回答例です。相手がヒロシさんではなく、酔ってらっしゃる方の場合は、この内容でも御立腹なさる方がほとんどです。
状況によっては、ただひたすら謝り続けることもあります（笑）。
次のページにはもう少し踏み込んだコメントをしてみようかと思います。
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