以下は以前に僕の元に届いたメールとそれに対する僕の回答です。
日本の歯科医療が抱える構造的な問題が端的に表れた例だと思います。
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最初のメール、、、
ホームページを見て大変立派なので不躾ながら質問させていただきます。ぐらぐらしだした歯は抜けるか、抜いてしまうか方法はないのでしょうか。かかりつけの歯科医は「打つ手なし、その歯に力があれば残る」と言いますがそんなものでしょうか。歯周病の治療のため長く長く約1年間その歯科医にかかっていますが一向によくなりません。一本は抜いてしまいました。そのあとに小さい義歯を入れています。歯磨きは一日に3回お手本どおりしています。手動以外に電気式口腔洗浄器、電動歯ブラシも使っています。年齢70歳という事は諦めなさいという事でしょうか。
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僕からの最初の返事、、、
結論から申し上げますと、70歳という年齢だけの理由で諦める必要はありません。そして、「歯を抜くという治療は受けたくない」ということを主治医の先生にしっかりとおっしゃるべきと考えます。希望は正直にそのまま伝えることが肝要です。その希望に対し、「無理である」とか、「条件付きで可能である」等の説明をするのが、医師の役目と考えます。もちろん、「無理である」場合はその理由についても説明が必要でしょう。歯周病の治療法は、患者さん1人1人の歯周病の状態(進行度、咬み合わせとの関係など)によって、変わります。歯周病の状態によっては、「歯茎を切ったりするような手術」や「もはや手後れで抜く以外にない」といった必要があるかとは思います。
しかし、他にも方法があるかも知れません。世間一般では、歳をとると、歯がグラグラしてきて抜くのは仕方がないと思われているようですが、僕個人の考えとしては「そうとは限らない」と思います。 治療期間についてですが、これも歯周病の状態によって異なるので、一概には申し上げられませんが、グラグラしている歯があるということから推測するに、重度の状態かと思われます。それならば、1年間というのは決して長くありません。2年以上かかることも珍しくないからです。 一向に良くならないというのも、しっかりとした精密検査をした上でのことなのでしょうか?。もしそうならば、術前と術後の検査結果を比較した上で、治療したが奏効しなかった旨を主治医は説明する必要があります。 「打つ手なし、その歯に力があれば残る」 というのはどういうことでしょうか?医学的な表現ではないような気がしますね。 歯磨きの仕方も、患者さん個人個人で最適な方法は変わってきます。それに対しても細かい説明を受けられるべきと考えます。
実際にお口の中を拝見していないので、推測の域を出ていないのですが、主治医の先生とは、もっとコミュニケーションをとった方が良いような印象を受けました。「本当にその治療法しかないのか」ということを質問した方が良いと思います。「治療法は他にもあるにはあるが、あまりお薦めできない」という答えが返ってくるかもしれません。では何故お薦めできないかという説明を受け、患者さん御自身が納得されれば一番良いと思うのです。 医学的には最良の治療法であっても、その患者さん本人にとってはその治療法が最良とは限りません。是非納得の行く説明を受けられることをお祈りしております。
茂木信道
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2度目のメール、、、
茂木様
早速のご指導いただきながらお礼が遅れました。
まだ歯はくっついています。ポケットの深さは10とのことです。
身体髪膚これを父母にうく、あえて毀損せざるは孝のはじめなりと思い自然に抜けるのは仕方ないが抜きたくないのです。歯磨きはキチンとやりながら主治医によく聞きます。
さらに注意すべき事があれば教えてください。
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2度目のメールに対する返事、、、
こんにちは。
主治医とのコミュニケーションをしっかりと、、、。
これに尽きると思います。
今までの歯科をはじめとする日本の医療は
様々な理由から医師と患者とのコミュニケーションが稀薄でした。
是非ともしっかりとした説明を受け、納得した上で良質の医療を受けられることをお祈りしております。
茂木信道
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3度目のメール、、、
茂木先生へ
今年1月頃メールを差し上げました者です。
ご指導有難うございました。その後治療を続けていますが歯周病全く芳しくありません。治療暦ですが昨年平成14年は5月に4回、6月に5回、7月に3回通いました。6月には右下5番に保険外治療で刺し歯をしました。7月に治療完了といわれましたが、今度は右上6番がぐらつき抜歯し、ブリッヂで小さな義歯を作りました。ところがその後左上4番と5番がぐらつき11月に2回、12月に1回治療を受けました。今年に入り1月に3回、2月に7回、の治療を受け、左上4番5番も抜歯しかないといわれ、上顎の義歯をブリッジで作りました。上顎は左6番7番は相当以前からなかったため、左4、5、6、7、と、右の6番の義歯です。上顎を繋ぐかたちの部分義歯。チタン床で30万かかりました。昨年6月の刺し歯は一本で7万です。いや金のことを言っているのではありません。
すべて一向によくならず、今年は3月に4回、4月に4回ですから毎日歯科医に通っているみたいですのに、この上顎義歯を作ったあと、左下4番の神経を抜き詰め物をした直後、右下4番5番が噛むと痛くなり、5番は昨年刺し歯をしたところなのに何の為だったか、と思っています。
ちなみに私70歳ですが、歯以外は心身すべて健康です。既往症無く、人に若いですねえと感心されるほどです。もっともタバコの方は1日に30本ですから歯周病によくない事はわかっています。
治療のたびにスケーリングと歯茎に薬をつけられていますが結局全部抜かれてしまうのでしょうか?
残っている歯は下、6番7番以外全部。上、左1、2、3、右1、2、3、4、5、7番です。前歯は下は全部自分の歯、上は以前に差し歯をしたものが丈夫に残っています。
今も、右下4番、5番がかみ締めれば痛み、食事は左でかむばかりの状態。本当に何とかならないものでしょうか。
歯医者さんというのは、患者にほとんど説明しませんねえ。インフォームドコンセントは歯科医がもっと熱心にして欲しいと思います。
患者はいつも口を開けいてモノは言えない状態が多いのですから。
歯さえよくなれば90でも100でrもボケずに生きられる自信があるのですが・・・・。
失礼します。
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3度目の返事、、、
こんにちは。
説明のない治療は患者さんを不安にさせる最大の原因ですね。
忙しいというのもあるのかもしれませんが、本来それは理由にならないはず、、。
歯科医療に不信感を持つ人は相当数いらっしゃると思いますが、原因の殆どは説明不足にあると思います。
日本の医療(特に歯科)の抱える構造的な問題だと思います。
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不本意ながら、
もはやこれ以上のコメントを差し上げることは無理になってしまいました。
具体的にどのような構造的問題なのかということについては、別の項で記していこうと思っています。
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