『上手な歯医者のかかりかた』
賢い患者さんになるために、、、(歯医者の本音)
昔に比べればずいぶん改善されましたが、やはり歯科治療は不快な要素が多いものです。
不快な行為に対してお金を払うなんて、、、
考えようによっては何という不条理でしょうか。
しかし、それが嫌で受診を先延ばしにしていると、
不快の度合いが増してゆくのもまた事実、、、。
せっかくなら、少しでも良い気分で歯医者に通いたいものです。
患者さんも人間、歯医者も人間です。人間対人間である以上、相性というものも少なからず存在します。そして、人間同士のお付き合いの基本的ルールというものも存在します。
普通の社会での人間同士の付き合い方の基本的ルールと、歯科医師に対する付き合い方の基本的ルールに違いがあるのでしょうか?。
答えは「NO」です。
基本的なルールに違いはありません。
ある医療ジャーナリストの著した本などには、「医療に対しては常に疑いの目を持って接するべき」などと書いてありますが、これはまったくの間違いです。
その本には「患者が疑いの目を持って医師と接することで、医師は手を抜けないという気持ちになり、緊張感が生まれる」などとも書いてあったりします。
確かに緊張感は生まれますが、それは良い意味での緊張感ではなく、妙な緊張というか、、、
どちらかというと「気が散る」とでも表現されるようなものです。
そのような精神状態で医療行為をして、果たして良い結果が生まれるでしょうか。
そして、常に自分のことを疑っている患者さん、、、医師はこのような患者さんのことを好きになれるでしょうか?。
このようなことは男女関係にも通じるところがありますね。
やはり、自分を疑いつづける患者さんよりも、自分を信頼してくれる患者さんのことを好きになるものです。
そして、自分を信頼してくれている患者さんに対しては何とかその信頼と期待に応えようと思うのは、人間としてごく自然なことです。
できることなら、患者さんは歯医者に対して好感を持ち、歯医者も患者さんに対して好感を持って、お互いが双方に好意を持ちながら治療を進めてゆく方が、良い結果が出るに決まっています。(もちろん「この患者さんは嫌いだから」という理由で、治療の内容を変えるようなことがあってはならないのは言うまでもありません。)
ただしここで誤解のないように、、、。
歯医者に好かれるために「媚を売りましょう」と言っているわけではありません。
媚を売ることによって一時的には好かれているような感覚に陥ることもあるかもしれませんが、長期的に視ると、良い結果を生むことはほとんど無いようです。
これもまた男女の関係に通じますね。
要するに人間対人間である以上、基本的ルールと言うか、マナーやモラルなどは全てにおいて共通であるということです。
では、歯科医師と本当の意味での良い関係を築くために、患者さんとしては具体的にどのようにすれば良いのでしょうか?。
歯科医師として思い当たる代表的な事項について以下に記したいと思います。
1)治療法の指定をしない
「率直に希望を言う」ことと「治療法の指定をする」ことは違います。
いきなり「○○法で治療してください」と言う方がいらっしゃいますが、実はこれ、相当に面食らいます。
どんな治療法でも症例によって適応できる場合と適応できない場合があるのです。
とにかく、まずは診察させて下さい。
そして診査の結果を見ながら最も適した治療法を一緒に考えて行こうではありませんか。
2)前の歯医者の悪口を言わない
絶対に言うなとは言いません。前医での不愉快な体験などは率直に言った方が良いでしょう。
ただ、悪口というものは言い始めると、どうしても止まらなくなり延々と語ってしまいがちですから注意が必要です。
これも男女関係に通じるモノがあります。
現在の彼氏(彼女)から、以前の交際相手の悪口などを延々と聞かされるのは好きですか?。
3)自己責任を意識して下さい
歯科医師が「この治療法を行った方が良いと思われます」と治療を提案した時に、それを受け入れるか否かは患者さんの自由です。
ただし、提案された治療を拒否なさる場合は、その後の経過に関しての自己責任を意識していただきたいのです。
歯科医師は歯科医療に関する限り「その道のプロであり専門家」です。
各々の患者さんに最も適していると思われる治療を専門家としての見地から治療の効果も含め提案するのですが、近年は「その治療はやめておきます」とおっしゃられる方が多くなっています。
治療費が高額な場合ならともかく、そうでない場合でもです。
しかし、そういう方に限って、その後の経過が思わしくないと「全然良くならないじゃないか」と不満を訴えてきたりします。
例えば登山をする場合、プロの登山家から「今日の天候ではこちらのルートを通った方が良いでしょう」と言われても「いや、そのルートはやめておきます」と言うのと同じです。
御自身が選択したルートを通って遭難したとしても、もはやこれは自己責任だと思うのですが、そういう方に限って「死ぬところだったじゃないか」と文句を言ってくるようなものです。
この問題が厄介なのは、患者さんが治療を拒否した場合には、医師側としてはよほどのことがない限り、もうそれ以上根気よく勧めることはしない、要するに手を引いてしまうというところです。
患者さん側が一旦拒否しているのに、さらに強く勧めて、結果としてどんな些細なことであれ問題が発生したら何を言われるかわからないので、怖くて手が出せないのです。
もし、あなたが医師から提案された治療法に納得が行かず、やむを得ずその治療を拒否するとして、その時に大切なことは、拒否した場合に今後どのようなデメリットが生じる可能性があるのかを「患者さん側が主導的に」医師から聞き出し、それをしっかり理解することが大切です。
4)無断キャンセルをしない
これはもはや一般常識のレベルの話ですが、予約とは「予め約束すること」ですから無断で約束を破って良いわけがありません。
体調が悪い時などもありますから、キャンセルそのものが悪いわけではありませんが、「無断のキャンセル」は別です。
つい約束を忘れてしまった時などは、仕方がない面もありますが、一定の時間をその患者さんのために確保していたわけですから、医院として損害を被る事になるのです。
医院の経営という側面から見ると、キャンセルの結果、予約枠が空いてしまうということは収入がゼロになるだけではなく、テナント料や人件費などを鑑みると実はマイナスなのです。
この「ゼロではなくマイナス」ということは意外と一般に認識されていないようです。
他業種、例えば旅行業、宿泊施設、座席指定などにおいて無断キャンセルは100%のキャンセル料が発生するケースです。
旅行業などは事前に連絡しても当日80%、前日50%のキャンセル料が発生したりします。
今まで日本の医療機関はキャンセル料を取ることをタブー視してきたきらいがありますが、今後はキャンセル料が一般的になるかもしれません。
そして何よりも、当該時刻に予約をとりたくても取れなかった他の患者さんにも間接的に迷惑をかける事になりますので、注意していただきたいです。
、、、
以上は、医師側から見た患者さんへの提言ですが、人間同士の関係である以上、医師から一方的に「ああしてこうして」と言うだけで良いはずがありません。
そして、このような提言をさせていただく以上は、医師側も徹底的に自己を省みる必要があるのは当然です。
さらに、患者さんの立場の尊重、ルールとマナーの遵守、これは言を待ちません。